感想『悪童日記』
思っていたのと違った。子どもが主人公の戦争小説というか、戦争戯曲だ。
第二次大戦下、ハンガリーと思われる国。田舎町で、初めて会う祖母の所に疎開させられる双子の少年。祖母は意地悪で貧しく、独りでしぶとく生きている。
少年達は耐えがたい境遇を、知恵を回し、自らを鍛え抜くことで生きのびる。どんな苦痛にも何も感じなくなる。時々、やるべきことはやる。
殺し、盗み、暴力、虐待、性加害。迫害があり、戦争は終わっても圧政が続く。
双子というのが、助け合う相棒のようでもあり、自分一人との対話のようでもある。
100年にも満たない少し昔の欧州はこのようだったのか。また戦争が始まればこのようになり、今も戦争をしている所ではこのとおりなのか。
兵士達だけでなく、戦地から離れた庶民も地獄を見る。
原題は大きなノート、双子が事実だけを描くことにした作文を思わせるが、邦題に日記とあるように、一つ一つのエピソードは短い。遠慮なく暴露される悪夢のような日常。その中で生きて死んでいく人々。