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アガサ・クリスティ『春にして君を離れ』読了。
最終盤でいきなり話題にされる、ヒトラーおじさん、あれってどういう意味を持ってるんですか?1945年後の世界で読むと、ちょっとした世間話で扱うには、強すぎる名前なんですけど。
(主人公の思考停止とか現実逃避とか、なんかそういう演出っぽい)

旅先で立ち往生した主人公が手持ち無沙汰になり、やむなく己の人生を回顧すると、そこにいたのは独善的な自分だった、というお話。
主人公はよかれと思って生きてきたけど、その「よかれ」が主人公一人だけの「よかれ」だったというお話ですね。
主人公が人生の中でしてきた選択は、世間的には正しい選択なわけですよ。何も間違っていない。でも、一個の人間にとっては、世間的に正しいことが正解だとは限らないですよね。
でもさ、主人公が相手にとって正しい選択、つまり世間的に愚かしい選択を取れる可能性って、あるんですかね?
だって主人公は「正しい」わけでしょう?世間話に、皮相的に。
主人公の正しさは一択しかなく、相手の正しさを認めない。
思い込んで、相手を見ない、相手の言葉を聞かない、相手の選択を認めない。
そういう生き方は怠惰だと、そう指摘しているお話ですね。

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