自分がリヒターを知ったのは、2002年、松本市に草間彌生のコレクションを中心とした美術館ができる年に通ったらいいなと思って出した企画が通って草間さんの番組を作ることになり、現地二泊三日の日程でニューヨークに行かせてもらったときで、最終日の半日空港行くまでの三時間ほとでMoMAに行ったら、たまたまリヒター展をやっていて、全然知らなかったこの作家のフォトペインティング作品を見て、驚愕し、以来薄いなりに、関心を保ってきたという感じだった。
ヴォネガットがスローターハウス5で書いた、ドレスデン出身のリヒターが、戦後東ドイツから西ドイツに移り、西側世界で、こういう作品を作り続けてきたことの重みを感じる展覧会だった。
ビルケナウの強制収容所でゾンダーコマンドが隠し撮りしたという四枚の作品をまず、フォトペインティングし、それを完全に塗り込めた作品ビルケナウは、その象徴だろう。
2014年にこの作品を完成させたあとの油彩の作品群(アブストラクトペインティング)は、明らかに色彩が明るくなり、なにか重いものから解放されたような明るい画面が美しかった。

私が行ったリヒター展は、川村記念美術館の20年前のやつでしたが、当時、大作の抽象絵画を見て、何かを描くというより、何かを隠蔽しているかのようだという印象を持ったのは、あながち的外れでもなかったんだなと思いました。
kawamura-museum.dic.co.jp/art/

ビルケナウの展示には、必ずそのゾンダーコマンドが撮った四点の写真が合わせて展示されるのだそうですが、その写真はやはり強烈なものがありました。

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