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『三の隣は五号室』長嶋有 (中公文庫)

『三の隣は五号室』長嶋有 (中公文庫)

読了。

この作品も「空気感が素晴らしい」という感想です。淡々とした、物語的な起伏に乏しいページが続いていくのだけど、時折ハッと時が止まるような感覚に陥る段落や、何もすごいことは起こっていないのに地面から数センチ浮いたような錯覚に陥る段落、登場人物にカッとスポットライトが当たり、その周囲が劇のように真っ暗になったように「見える」段落がある。
「共通のモノ」を中心に据えた群像劇は数多くあるけれど、動かないアパートの一室をそれに充てることで「流れる時」を強く意識させられるし、その一室が少しづつ変化していくさまに、登場人物たちには知る由もない「他者の気配」をいわゆる神の視点で知ることになる。そして、自分もこの本の登場人物になれるのだ、既にそうなのだ、ということに気づきます。

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