『テヘランでロリータを読む』アーザル・ナフィーシー Azar Nafisi 著、市川恵里 訳 (白水社)

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『テヘランでロリータを読む』アーザル・ナフィーシー Azar Nafisi 著、市川恵里 訳 (白水社)

読了。

とてもよかった。数年前に手に取りかけてやめてしまったんだけど、もっと早く読めばよかったなあ、と思う。でも、正直この本を「退屈だ」と思う時期があったかもしれない。大事に大事に読んだ。「テヘランで」「ロリータを」という意味を、読みながら何度か静かに思った。

私は本の「解説」とか「訳者あとがき」が大好きで、それは同じものを見ているにもかかわらず私には見えない世界を、愛をもって語ってくれることにすごくわくわくするからなんだけど、この本にも似た感覚があった。イランのこと、イランで女性が生きること、その女性も生まれた世代によってなすすべのない差異と喪失があること。何度も映画『聖地には蜘蛛が巣を張る』が頭をよぎる。あの映画は2000~2001年に起きた事件が下敷きになっていた。そういうことももちろん、唇を噛み締めながら読んだけれど、この本にあふれる、「小説」に対する身を乗り出すような愛情! 著者にとって小説は生きることと分かちがたくある存在なのだろうなと思う。そしてその表現に想起されるような「重い」イメージとはまた全く異なる、「私はこれが好き、ねえ聞いて」というパワーがある。それに力をもらった。

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