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Ducks—Two Years in the Oil Sands
By Kate Beaton
グラフィックノベル。430ページ。

「孤独と労働、生き抜くことについての美しい作品だ。階級やジェンダーが複雑に絡み合う地形をケイト・ビートンの深い思索とともに進む。喪失と尊厳にページが震える」ーーカルメン・マチャド

drawnandquarterly.com/books/du

最後の1コマの破壊力がすごい。嗚咽が止まらない。

学資ローンを返すためにカナダカルガリー州フォートマクマリーのオイルサンド採掘場に「出稼ぎ」にいく著者ケイトが主人公の自伝。彼女の2年間を淡々と描く。

男性労働者が圧倒数の現場で働くなかで、女性差別をうけるケイト。常習化しているハラスメントに失望の日々を送る。徐々にタールサンド産業自体の搾取構造に気づき自分もその一部だと認識するが、抜け出せない。

利益を追求するあまり人間がないがしろにされる職場で、追い詰められていく人々。すごいディストピアでこれが本当に現代カナダで起こっているのだと衝撃を受けた。

タールサンドはファーストネーションの土地で採掘が行われている。そちらの視点からしか捉えていなかったけれど、実際になかで働いた人の、しかも女性の証言としてもこの作品はすごく意義があるのではないか。

ああまたやってしまった! アルバータ州です!(前の投稿)カルガリーは都市名で州名ではありません。ごめんなさい

DUCKSの著者ケイト・ビートンさんの講演をきいた。トラウマの中で怖がりながらもオイルカンパニーを「殺人者」と呼び、絶対に批判しなければならないと思ったという話を聞いて、やっぱりこの作品は日本に紹介したいなと強く思った。先住民の人たちが公害に苦しみ、多くの動物が殺されているのは分かっていたのに「渡り鳥のカモ(DUCKS)」がオイルサンドに飛来して死んだことが明るみになると、「カモがかわいそう」と大騒ぎになり会社が謝罪する。その偽善者ぶりに憤る主人公は性暴力被害者であり、自分の置かれている状況から身を守るのに必死で働き続けることしかできない。無力さ、若い頃の無知さ、自分の選択への後悔に向き合いながら話すケイトさんの言葉にすごい涙出た。
また、その場所が安全だと思って飛来したカモに、オイルサンドで働く人たち、自分の姿を重ねたのだという。安全だと思うから飛んできたのに、待っていたのは死だった、と。
わたしはエンディングをどうやって決めたのか質問した。終わり方が分からなかったから、いくつかのバージョンを作り編集者に決めてもらったのだという。きめてもらったら、あの終わり方しかありえないと思えたらしい。
多くの賞もとっている。先日はカナダREADSでも優勝した作品だ。ページ数も多いけれど日本でもぜひ読まれてほしい。

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