ラストマイルネタバレ感想伏せ①
・最初からフルスロットルで「社会インフラ」をまわす「現場の人間」の視点を映す演出で、"らしさ"だった。
・かなりたくさんのサブテーマを取り扱っていて、観てる側でさえ取りこぼしが出そうと感じる。よくまとめきったな…
・最初の死傷者の時点で「犯人か」とわかる作りだった。結局これは「テロ」なんだけど、テロリズムがNGであることは前提の上で、「なぜそのテロリズムがおきたのか?」を全編通して探らせる作りになっているのを直感できた。
→結論として筧は「世界に贖わせる」と同時に加害者である「自分の罪を贖う」ために自分を最初の被害者とし苦しい死に方を選んでいる。筧の望みは「自分で終わりとなるならそれがもっとも良い」ではある。
→許されない手段ではあるが、それをわざわざ言うとなるとこの映画のテーマからぶれていくので手段否やを改めて言うことはあえてしていない。この映画を観る人々への信頼を感じた。
→あげた声が握りつぶされ続け、過激な手段として出た時に初めて"脚光"を浴び、「もっと穏便な手段はなかったのか」と言われるのはここ数年何度もあり、着目している人ほどこのことに疲弊している。この苦しみを十分に吟味した上で、制作としてこの犯人に対してそのような言い回しをしないように留意しているのも伝わる。
ラストマイルネタバレ感想伏せ②
・すべての原因となった山崎の自殺原因を明確に語らない。思い切っているけどこれも観る人への信頼を感じてよかった。
→エレナの体験と孔の話(前のセンター長も病んだ)等を通じて山崎が追い詰められた過程を推測させている。
→もちろんパワハラもあっただろうし過労もあっただろうけど、それはメッセージのこもった飛び降りをするには弱いよね。そこだけじゃない。これは山崎の誇りと人間性を守るための一石だと思う。ただしストーリーとしてこのような手段=自らを犠牲にする手段を直接良い結果に結びつけていないので、これもバランスが上手いなと思う。自らを犠牲にするのではなくエレナのように生きて足掻いてできることを考えて実行することをよしとしている。変わらぬ安心する味付け。
→山崎は何のために飛んだか。「組織のために」「より立場の弱い人々に無茶を押し付ける」こと(人間性)と、組織による洗脳や自己洗脳による免罪符(これは○○のためである)の狭間で、人間性による抵抗を選んだから飛んだ。ブラックフライデーが怖いのは人間としての生活すべてを注ぎ込んで成果を出さなければならないことやパワハラを受けることのみでなく、自らもパワハラをするような立ち回りをする人間(+立場)になっていくこと。
ラストマイルネタバレ感想伏せ③
→山崎は歪な組織と歪な自分に誇りを持てず苦しんだ。エレナも同じことに苦しみ、カウンセリングを受けていたことから推測できる。顧客至上主義といいながらそれらが詭弁に過ぎないと察知し、下請けの会社に無茶な要求を通すことを当たり前に思い始めてしまう一方で、引っ掛かりをずっと覚えている。
→ここに対して共感できるかどうかでこの作品に対しての評価は変わる気がする。誇りを持てる自分でありたい。仕事に誇りを持ちたい。されど誇りを持てる仕事や自分であることを許されない状況に追いやられた、そういう体験がある人にとっては見覚えのある光景。逆に言うとそう言う場に追いやられたことがないか、そういう場においても自分を見失いかけたことがない人にとっては「?」となるかも。パートナーはそんな感じの反応だった。
・歪な組織において自分の仕事に「誇り」を持ちたい気持ちは二つに分岐する。ひとつは五十嵐やサラのように自分の人間性や良心について見てみぬふりをすること。彼らは免罪符を口にし、絶えず自己洗脳を行い、組織において成功したように見える。もうひとつは人間性や良心のために辞めたり一石を投じたりすること。これは山崎やエレナが選んだ道。作中何度か分岐効果音も鳴ってたな…二回目でちゃんと確認したい。
ラストマイルネタバレ感想伏せ④
→エレナが五十嵐に対して我々は誰しも逃れられないと言ったこと、サラに対して「爆弾はまだある」と言ったこと、共通して二人がただ「見てみぬふり」をしていることを指摘している。見てみぬふりにすぎない。いずれぼろがでる。五十嵐は逃げ続け自己洗脳し続けることで山崎の飛び降りを受け止めていないにすぎない。山崎の「イヤ」な態度すべてがこれ。すべて他責的で組織の靴を舐めるふるまいしかできない。
→受け止めないまま突き進んだ先にあるのは破滅であることは示唆されている。完全に良心を無視して自己洗脳に成功しコンプラNGのことをやり続け社会的に致命的なミスの責任を負って社会的に終わりを迎えるか、自分の良心を殺しきれないままじわじわと不安感や見てみぬふりの罪悪感になぶられていずれ病んでしまうか。五十嵐が山崎の飛び降りた地点を見に行ったことで五十嵐が向き合い始めていることもまた示唆されていて、これから五十嵐の地獄の時間がはじまると予感させてきている。
・予告から伝わるテーマがテーマだったので事前にかなり覚悟していったけど、問いかけはあれど思ったより過激ではなかった。少なくとも消費者の欲望を責めるというメッセージは制作にはないと感じた(シングルマザーへの誕生日プレゼントの一幕はこれを明確にしている)。
ラストマイルネタバレ感想伏せ⑤
→組織(特に「社会インフラ」と化した組織における社会に対する責任の感じ方)と自分を大切にすること・労働者の権利について描いており、まなざしは優しい。
→これもまた、「それでも」の話だった。この社会には問題がある。あなたも社会の一員であるその問題について「関心」を持ってほしい。見てみぬふりをしないでほしい。アクトしてほしい。それはうまくいかないかもしれない。それでもあきらめないでほしい。あなたにも関係はあるよ。言葉にすると陳腐だけど、そうした祈りや願いをいつも根底から感じる。
・野木さんの好きな女性像が見えてきたような気がするんだけど気のせいかな? わたしも好き。
まだ全然書ききれない。まだ書いてないテーマたくさんある。よくまとめたな〜〜〜ほんとに…
@mezzot 感想大変おいしゅうございました。ワタクシ22時までならお話しできるのですがもう誰かとお話し中でしょうか。