Ariel Mae Lambe, Seeing Madness in the Archives, The American Historical Review, Volume 127, Issue 3, September 2022, Pages 1381–1391, doi.org/10.1093/ahr/rhac293

自己の生きられた経験を通じて、歴史家が自身の精神疾患について沈黙することと、沈黙を破ることの意味を考察した論文。
現在においても過去においても、エイブリズムは疾患や障害の非開示や沈黙を生み出してきた。本文中で紹介されているある調査によると、267名の精神障害や精神疾患がある(又は過去にあった)と自覚する大学教員のうち、34.1%はキャンパス内の誰にも自分の障害や疾患について話していない。
エイブリズムは、歴史家自身だけでなく、アーカイブズにも狂気や自殺について沈黙することを強いることがある。暴力的に文書を排除するのではなく、単に「そのことについては触れないでおこう」とスティグマ化することでこうした沈黙は作り出される。

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こうした問題に対する解毒剤は、(難しいことだが)語ることだと著者は主張する。
沈黙を破ることは、著者個人にとっても治癒のプロセスの一部だった。それと同時に、mad identityの獲得は、アーカイブズの中にこれまでは見落とされていたような狂気の可能性を見いだすのに有用なレンズを著者に与えることになった。狂気を含む多様な視点(人種、国籍、性的指向、性自認、出身地、エスニシティなどで既に前例は多数ある)を学問に取り入れることで、より豊かで複雑な歴史の創造につながるのである。

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