『統合失調症の一族 遺伝か、環境か (原題)HIDDEN VALLEY ROAD』を少し前に読みました。
発症には遺伝と環境の両方が関係していると言われるこの疾患、「母親の育て方に原因がある」という説はいっとき支持を得てその後否定されました。
母親だけに責任を求める懲罰的な論調は淘汰されて然るべきだと思います。しかし、親が混乱させるような接し方を日常的にとり続けることや、身体的精神的な安全を感じられない家庭環境というのは、どんな子どもにとっても強いストレスをもたらすという点は否定できないのではないでしょうか。
もし遺伝的に精神病を患いやすい要因があるとあらかじめ分かっていれば、環境面ではせめてトリガーとなりうる事象を遠ざけるのが理想、というのは誰もが考えることでしょう。しかしながら、遺伝と同じく家庭内での振る舞いもまた上の世代から下の世代へと引き継がれやすく、次の世代は先天的にも後天的にもリスクを抱えやすいというのがこの問題の辛いところだと感じています。
そこを越えて自分の人生を刷新し、なお身内へ手を差し伸べ続けるメアリーの強さが、読後しばらく経っても鮮烈に残る一冊です。