コロナで他大学の利用者を受け入れていなかった専修大学図書館で、ようやく文献調査ができた。実際、昨年から受け入れていたようだったけど、こっちのタイミングが合わなくて…。でもコロナ下(この漢字変換もありでしょう)でずっと希望出していたやつなので、少し感慨深い。
これまで直接所蔵先に閲覧願いを出すという方法を取っていたけれど、所属大学図書館の紹介状が必要というパターンは初めてだった。この方式だと極めて事務的で、図書館が間に立つから先方と名刺交換とかもなく、礼状も不要。むしろ自分の所属図書館にお礼をお伝えしたくらい…。
まあ直接お願いをして断られるときのショックもそれなりにあるので笑、事務的な方が気が楽は楽ですけれど。同じモノを対象としていても、研究者や研究機関にとっては学術、所蔵者にとっては私的な宝物ということになるので、見せていただくときのプロトコルは当然違うものになるわけです。
私は不届き者で、若い頃は原本など見なくても研究できると思っていたし、「見せてもらえるポジション」という政治性も問題だと思っていたので、敢えての影印やネット画像だった面もなきにしもあらずですが、ネット画像がこれだけ一般化してしまうと敢えて逆の価値を考えてしまうというか…基本不届き者なんだと思います。
2000年代にオープンコースたるMOOCが現れて、e-Learningは大規模化に向かいました。オンデマンドは少人数授業よりも大規模であれば大規模であるほど効果を発揮するなどと読んだことがあります。大規模であれば学習コミュニティができたりしますし(そういう機能もサポートしている)、学習到達度を統計的に確認できるので、こちらも難易度を調整したりしやすい。
ある本によれば2020年代は個人の好みや個別の要望に応じたサービスの提供が必要になっていくだろう、と推測されていて、Teaching Assistantが入って細かくサポートしていくことと補い合いながらやっていくのが良い形でしょうね。私の授業は80名程度なので、このスケールだと対面でやるのとあまり変わらないかも知れませんが、繰り返し動画が見られる、受講の場所を選ばないという科目の強みを生かして、工夫を考えたいと思います。
あと10年すれば、このTA的な細かいサポートはAIがかなりできるようになるでしょう。今も企業のみならず、多くの大学でチャットボットを導入して相談業務を軽減していますよね。ならば授業にも当然実装されていくだろうと私は思います。それと専門家たる人間の教員がうまくコラボすることが求められていくのでしょう。
今学期はフルオンデマンドの授業を1つ持ちます。自分の所属先でフルオンデマンドは初めてですが、コロナから非常勤先の科目を1つずっとフルオンデマンドでやってきたので、ノウハウはそれなりにあります。
変わったのはそれを実施するLMS(Learning Management System)のほうで、今期はMoodleを使います。Moodleは2019年の国内調査ではもっともシェアを持っているようですが、フリーなので各大学がサーバー上で上手に運用する必要があります。前の職場はUniversal Passportという商品で、中規模大学では教務システムとセットで動くことから導入を拡大させていました。そういう大学では自前でメンテできないので業者の力に頼りながら使うというスタイルです。
https://axies.jp/_files/report/publications/papers/papers2019/TP-27.pdf
ということでMoodleは学期始まりには不具合が生じるのが基本のようです。トラブルシュートにあたるスタッフも必ずしも専門家ではないので、ユーザーと対話しながら解決に向かう形。早速わたしもトラブルが発生し、結局それは小テストで設定した満点以上を付けると、すべての更新ができなくなるという単純な要因だったのですが、あーでもないこーでもないとしながら自己解決するに至りました。まあこんな感じ。
藤本タツキ『ルックバック』が映画化されるってんで予告編が出ています。原作は東北芸術工科大学が出てくるところも含めて、山形在住だった12年によって培われたわたくしの偏った山形愛も含めて、いやそれがなくったって好きな作品なのです。
そんでもって、予告編!研究者とか抜きにして脊髄からの直情的な反応で恐縮ですが、この東北弁はムカつくな!いま関西人が関東人に真似されるとムカつくという感情を心底理解しております。
劇場アニメ「ルックバック」本予告【6月28日(金)全国公開】 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=gH6zVJVHEaM
なんだろう、こんくらい無アクセントにしときゃあ東北弁だろ、という、いやそんないい加減な気持ちで張るはずはないけれど、声優さんは頑張って東北方言に寄せてくださっているのは想像できるんですよ。そういうものへのリスペクトはあります。しかし、こういう感情って芽生えるものですねえ。自分で驚きです。そこまで自分が山形の当事者性を背負っている気持ちになっているとは…これは本当の山形ネイティブからすると重たいかもしれないわたくしの気持ちでありました。
日本語学会ワークショップの予稿を取りまとめ、どうにかギリギリで送信することができた。年度末から年度初めの皆さん地獄の忙しさの中、お付き合いくださって感謝感激雨あられ…
なんかひとつ大きな気がかりがあると他の作業がなかなか手に付かない。複数の仕事を全部未完成のまま少しずつ進めるということは、「まだできてないな」という不安を複数抱えながら、それでもやり切るという未来を頭にどう描けるかですね。
「物事を決めない」まま可能性は可能性として焦らず手元に置いておくということは、知的体力が必要なとても大切なことだと普段から思ってはいるけれど、仕事で例えるとなかなかしんどいことです。決めるより決めない方が労力が必要。決められるんなら早く決めたいし、終えられるならすぐに終えたいのが仕事ですよ…
言うは易し行うは難し
「すずめの戸締まり」にて、爺さんが「無に(なる)」のアクセントを0型で発音していた。古いアクセント辞典を複数確認すると、「無にする」で今と同じ1型のほか、0型も記載する。声優さんは誰じゃろうなと思って調べてみると、松本幸四郎(現松本白鸚)ではありませんか!
やはりこういう古めかしいアクセントは梨園に伝わっているということでしょうか。1拍の漢語アクセントには古く0型のものももう少しあったようです。「(そうだった)気がする」のような。「魔の(踏切)」も今では1型が主流になってしまった。
こんな関心で昔のテレビ版「妖怪人間ベム」に古いアクセント型が観察されないだろうかと思って、頑張って見続けたことがありますが、いくつか出てきたことは出てきた。大学の演習でやったら面白いかなと思ったこともあるけれど、学生に有料コンテンツ加入させるのもな、とアイディア止まり。
昔の日本ではハート形を何と呼んでいたのだろう 気になるねえ 何故気になっ..
https://anond.hatelabo.jp/20240325095758
原稿がなかなか進まないんです、現実逃避とは分かっているんです…
山形ではトランプのスートのことを、それぞれ桃=ハート、黒桃=スペード、三つ葉(ぱ)=クローバー、角(かく)=ダイヤと古く呼んでいた。山形市だけかも知らんけど。こういう近代以後の「方言」はなかなか辞典類にも記載されない。これを教えてくださった上品な年配の女性は、角を頭高アクセントでかつ語中有声化で「カグ!」といってて、その温かくも笑いの混じった声が耳に今も残る。「わたしだ、カグて、ゆたもねえ(私たちカクって言ったもんねえ)」、こんな感じだった。武田さん元気かな。
それはそうと、建築用語でハート型を「猪目(いのめ)」と言ったらしいことがwikipedia先生によって説明されています!
猪目 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/猪目
Shrumeling→Shrumal Ogre→Shrumal Warriorと、同じ系統のキャラが似たような形態素を持ちながらクラス化されるときに、原語の持つ「マッシュルームっぽさ」(とは私はすぐには分かりませんでしたが)を保ちながらどう翻訳するか、というのも関心をそそります。日本語のゲームでも、ギラ→ベギラマ→ベギラゴン、ヒャド→ヒャダルコ→マヒャドみたいに、形態変化の間に対応関係がないものと、ファイア→ファイラ→ファイガ、ブリザド→ブリザラ→ブリザガみたいに対応関係があるものとがあって、英語訳はFire1→Fire2→Fire3みたいにしたんだとか。意味と体系性と両方キープしながら、それでいてダサくないネーミングを探るというのは高等な知的作業だと思わされます。
DeepLに翻訳すると全然ダメというのも、今風の話題でいいですね。あれは存在しているデータに基づいているので、本当に存在しないものはまだまだ人間が必要という話で、よく分かる話。記事によれば近い意味で訳語を作ってくるらしいですが、創作語の意味と体系性のうえにさらにかっこよさを勘案して、となるとLLMでも難しいんじゃなかろうか。
そしてSilk Songはいつ発売になるの!!!超待ち遠しい!!(2/2)
ゲーム翻訳最前線:第4回は伊東 龍さんと「ホロウナイト」。「固有名詞を無理に日本語化するとダサくなる」現象と,開発側との対話の重要性
https://www.4gamer.net/games/435/G043587/20240319008/
幕末から明治期にかけて、押し寄せる西洋の概念・言語を日本語に置き換える営みが盛んに行われ、新しい漢語がたくさん増えた。いわゆる「新漢語」と呼ばれるものです。翻訳とは一般的に逐語的な置き換えと思われている節がありますが、まだ日本語にない概念の場合、ことばを創作する必要があります。例えば、有名なところでは、西周がPhilosophyの訳語として「哲学」を作った、とかです。この訳語で定着するまでは「窮理学」など紆余曲折もありました。
で、架空のゲームキャラをどう訳す、という問題です。ここでは私も愛して止まないメトロイドヴァニア、Hollow Knightの日本語ローカライズにあたっての苦労が語られています。ホロウナイトが「空洞の騎士」じゃダサくなるだろう、じゃあどう訳すといったときにこの場合は音訳の方法が採用されるけれど、あのキャラやあのキャラは…という種明かし。非常に面白いです。また、中国語ローカライズは「空洞騎士」なのにダサくはないらしい…というのも、どういう感覚の違いが彼我間にあるのかという点も興味深い。(1/2)
サピア・ウォーフの仮説を読んでワクワクした人間としての、メモ。
今井むつみ氏『ことばと思考』なども補助線として。
話す言語によって時間の感覚が変わるという研究結果 - GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20240324-language-time/
日本語学の研究者です。漢字音史、漢語アクセント史を文献ベースで狭くやってます。自己紹介的な論文に、「アニメ『ドラゴンボール』における「気」のアクセント─漢語アクセント形成史の断線から─」(日本語学2022年6月号)あり。データベース作ったり、自転車に乗ったり、珈琲を飲んだり、ジャム作ったりしています。https://researchmap.jp/read0135868