「○あゆかは 愛甲(相郡) 阿由加波(アユカハ) 甲(カフ)ヲカハニ用ヒタリ。愛(アユ)ノコトハ下ニ出」と。なおこの項目は何を言っているのかというと、「甲」はもともと唇内入声韻尾といってカフという字音でして、その音の聴覚印象に「川(カハ)」を寄せてこの表記を作り出したということです。愛甲(アイカフ)←鮎川(アユカハ)ということ。
「くるま(kuruma)の国」に「群馬(gunma)」を当てるも概ねこの方式で、ruとnuがギリギリ似ていることに寄せているわけですが、カハをカフに寄せるか!と漢字音研究をしていても意外な印象が拭えません。「あたご」を「愛宕(aitang≒アタグ)に寄せるのよりも、かなり距離があると感じられるのは何でだろう…
『地名字音転用例』には群馬の「おはらぎ」を「邑楽郡(おうら<オフラ)」に寄せたというのもあるから、いいのか…。「あまみ」を「奄美(ammi≒アムミ)」に寄せるくらいだからな。u-aはいいのか。
ちなみに今野真二さんがエッセイでこれに触れているが、宣長や好字二字令には触れていらっしゃらない。(2/2)