> 吉増:そういうふうに1つの言葉、1つの概念を従来のものとは異なったものへと砕いていく、それがハイデガーの魅力なんですよね。おそらくハイデガーの言語能力には天才的なところがあったんじゃないかな。言語に不思議な、小さい蛇みたいなうねりがある。
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>『ヒューマニズム書簡』の最後の言葉として「言葉の中に目立たない畝を作り上げ、畑の畝を作る、その畝は農夫がゆっくりと歩みながら畑の中に付けていく畝よりも、もっと遥かに目立たないものなのである」とあります。
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>それで思いだしたのが、亡くなりましたけど、アイルランドのシェーマス・ヒーニーという詩人です。私と同年代だけど、彼が早稲田に呼ばれて講演をしたときに言っていたのですが、「改行」ってありますよね、詩の「改行」、そこで行を改める。あれはなにかというと、お百姓さんが畑に畝をつくって、どん詰まりまで来ると、今度は引き返して展開していく、それが「改行」だと言うんです。
ここの章題「詩の改行は、畑の畝」って書いてるけど、畝こそが詩なのでは?