Twitterの「毎月300字小説企画(第22回)」に参加しました タイトル「みちづれ」お題「歩く」どこでもなく、いつでもない、やすらいだ、すきまのばしょ。
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#kikimory #創作
『みちづれ』 もっと見る
先のない道を歩いていた。 犬の姿をした死神は、黙って後を着いて来る。 私が足を止めるその度に、黒い毛並みの死神はささやいた。「もうよろしいのか」 良くはないと、私は答える。「では、よきようになさい」 死神は、死は、斯様にして寛容だった。あてどなく歩き続けることよりもはるかに甘く、やすらぎに満ちている。 本当はわかっていた。私がかつて私であったところはもはやひどく遠くにあり、たどり着くことはできないのだと。これはただ一瞬の長い長い後奏なのだ。 再び歩き始めた私の背後に、柔らかな影が付き従う。 私たちの道行きはどこまでも続く。いつか、振り返った私がかれの黒いつま先にこの手を乗せるまで。ずっと。
#創作 #小説
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『みちづれ』
先のない道を歩いていた。
犬の姿をした死神は、黙って後を着いて来る。
私が足を止めるその度に、黒い毛並みの死神はささやいた。
「もうよろしいのか」
良くはないと、私は答える。
「では、よきようになさい」
死神は、死は、斯様にして寛容だった。あてどなく歩き続けることよりもはるかに甘く、やすらぎに満ちている。
本当はわかっていた。私がかつて私であったところはもはやひどく遠くにあり、たどり着くことはできないのだと。これはただ一瞬の長い長い後奏なのだ。
再び歩き始めた私の背後に、柔らかな影が付き従う。
私たちの道行きはどこまでも続く。いつか、振り返った私がかれの黒いつま先にこの手を乗せるまで。ずっと。
#創作 #小説