Gregory Hanlon著『Italy 1636: Cemetery of Armies』読んだ。
三十年戦争史の中でもあまり触れられることのないイタリア戦役について、Tornaventoの戦いを中心に1636年のキャンペーンを詳述した本。個々の記述には疑問点もあるが、全体的に面白かった。
フランスのイタリア侵攻計画に始まりsmall war的な敵地の経済破壊を目的とした行軍中の掠奪・破壊行為や、対抗するスペイン・ハプスブルク家の防衛計画、さらにTornaventoの戦い後の負傷者の治療や蔓延する疫病、当時の衛生意識などにページ数を割き、
会戦だけでなくその前後の両軍の行動を書くのはかなり良い。
特に会戦後のスペイン軍の追撃はイェンガムの戦いを思い起こさせる感じで興味深い。
こういう形で戦役全体を描く叙述は三十年戦争後半ではそれなりに貴重なんじゃないかと思う
一方で、問題点としては兵士の戦闘意欲について進化心理学持ち出す箇所や、当時の銃撃戦で死傷者が少ない理由にグロスマンやマーシャルの説明を出してくるのはかなり問題があると感じる。
前者についてはそもそも進化心理学自体がevo-devなどのここ40年くらいの進化生物学の知見をまるっと無視してそうなところが原因っぽいが、後者はこの本の中の記述とも矛盾してねえかという気がした。