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兵勢社『征論』読んだ。こういう複数テーマで複数人が書くやつはいろんな見方があったり予想外のことを知れたりするが、テーマの多様性度合いが凄すぎる。

「ウクライナでの戦争 ─視点・論点の整理─」はタイトル通り戦争の記述よりも戦争に対してどのような論じられ方があるかという整理だった。出典の偏りという弱点はあるにせよこうした整理は現在進行形で起こる不確かな情報に溢れたイベントでは重要と言えそう。

「ウクライナのユニコーン ─Gitlab─」はウクライナのユニコーン企業の紹介。転職してえ〜となったがスキルがない。

「Lorraine戦役とその忘れられた論争について」これは議論が予想外の方向に進んでいき大変良かった。正反対の評価を下した論者たちの背景に焦点当てて戦史研究の一種の政治的利用を浮かび上がらせていくのがすごい。こういうのがきっかけになって戦役自体が思い起こされると良い。

「クストリッツァ映画作品レビュー集」一読してアンダーグラウンドの監督がマラドーナのドキュメンタリー撮ってたことにかなり驚いた。かなり詳細なレビューで映画見なくても知ったような気になれてしまいそう。黒猫・白猫が気になる。

「フランス敗れたり現象を考える」ヨーロッパ西部戦線でのフランス敗北が日本である種のブームになった要因について探る論考。これも非常に良かった。つい直近の戦争の受け取られ方と雑な比較をやってみたくなってしまう。

「人民解放軍の火力誘導部隊」PLAの空陸協同の取り組みを中国国内の報道から追った論考。
本論とはあまり関係ないが「軍隊の高度化」の実態について垣間見えるところがあって興味深い。あと主に教育体制や役職といった面に注目してるが機材などのハードウェアにも変化が見られるんだろうかというのが気になった。

「第二次ロンドン軍縮会議と宣伝」これも面白い。軍部による直接的な戦史の政治利用例と言えそう。

「CVA-01とインヴィンシブル級」軍事力がどのような経緯を経て成立したかという話。全くの門外漢ながら非常にバランスが良いように感じた。軍事的な合理性よりもむしろその時々の都合によってしばしば予測できない方向に変化していくものだと実感させられる。「スエズ以東」概念が気になってくる

世相を反映したのか、直球の戦史というより戦史の語られ方にフォーカスしたものが多い印象を受けた。

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