トランスアメリカ

性別適合手術を控えたトランス女性に息子がいるとわかって……っていうロードムービー。トランス女性を演じているのはシス女性のフェリシティ・ハフマン。このキャスティングは今見るならはっきりと「良くない」んだけどシス男性が「女装」してトランス女性を演じてきたという恥ずかしい歴史を考えればシス女性がトランス女性を演じたことはマシではある、という意見もわからなくはない。キャストで言うと『ジェイコブス・ラダー』のエリザベス・ペーニャが出てきてちょっとアガった。グラハム・グリーンの役も渋くて良い。

映画全体を通して、トランスジェンダーがぶつかる問題を可能な限りリアルに描こうという気概は感じる。トランスセクシャルとトランスヴェスタイトの違いとかも織り込んであったりして2005年の映画にしてはかなり良い方なのかもしれない。しかしどうしても息子にトランス女性だと「バレる」シーンやこどもに「男なの?女なの?」と聞かれるシーンをギャグっぽくしてるところなどもう少しなんとかなったのではっていう演出があるのも事実。トビーがアウティングしまくるのが本当にキツい……。中盤で当事者であろう半役者的な人たちがまとめて出演しているけど「ちゃんと当事者も出演させてますよー」っていう言い訳めいたシークエンスに感じてしまった。

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また17歳のトビーが男娼として働かざるを得ないという現状に対しての批判的な目線は少し足りなかったと思う。当然セックスワークや男性同士の性行為が問題なのではなく、ティーンが生活費のためにそれをやってるっていう状態を演出するうえで必要な配慮があったのではないか、という感じ。ブリーに気づかれずにお金を作るために客を取るシーンがあったけどあれはスッと流されていいシーンなんだろうか。

こういう点以外にも、子を認知してない親への批判が足りないことや血が繋がっているとわかった途端に家族になることの気持ち悪さ、白人ブレイズのヒッピー泥棒にヴィーガンの設定を与えているなどモヤる点がいくつかあった。トビーの生みの母が自死してしまっていることはもっと掘り下げないといけなかったと思う。彼女にも想像を絶するような苦しみがあったはず。しかしその後のブリーに大きな苦しみや辛い経験があったのも想像に難くないので悩ましい部分ではある。

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