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読書備忘録『早わかり世界の文学』 

*ちくま新書(2008)
*清水義範(著)
パスティーシュは美術用語で模造品・模造画を意味し、文学でも模倣作品を意味する言葉として使われている。パロディとは似て非なる技法で、簡単に説明するとパロディは対象物の権威を剥がして滑稽な面を強調する風刺的技法なのに対し、パスティーシュは対象物を誇大化して引用のモザイクを形成する実験的技法というもの。ブラックジョークで対象物に肉薄するか、パッチワークで対象物を別物に換えるか。こう解釈するとおなじ模倣でも属性は全然違う。パスティーシュは笑わせる方法とは限らないのだが、著者は徹底的に笑わせる方に舵を切った小説家だ。本書は三回の講演と、それらに付記するかたちで文学論考を添えてパスティーシュの特徴を解説している。模倣なくして発展はない。数々の世界的名作が模倣をかさねることで生まれてきた事実は、著者の主張を強く裏付けている。『失楽園』も『サロメ』も『聖書』を元に書かれているし、その『聖書』にも『ギルガメシュ叙事詩』の模倣とされるエピソードがある。文学史を把握する上でパスティーシュを理解することは大事なのだと実感した。

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