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読書備忘録『イギリス怪談集』 

*河出文庫(2019)
*A.ブラックウッド 他(著)
*由良君美 他(訳)
河出文庫の怪談集が続々復刊しているおかげで、世界の恐怖小説を読むことができて嬉しい。物語に浸りながら各国の怪談に見られる特徴を探り、相違点を考察することも楽しみの一つである。国が変わると恐怖の表現法も変わる。こうした現象を、優劣を決めるのではなくて見識を深める目的で比較することは、怪奇幻想文学に対する理解力を高めるためにも大切な試みだろう。それではイギリスの怪談を収録した『イギリス怪談集』は如何なものか。ブラックウッドにジェイムズにストーカー、SFの親玉たるウェルズといった世界的文豪が名を連ねていて、目次だけで圧倒される。イギリスの歴史を振り返ると一九世紀には文芸雑誌に多数の幽霊小説が掲載されるなど、怪談という分野が重要なポジションに置かれていたことがわかる。それだけに起承転結の明快な物語は然り、幽霊が引き起こす超現実の表現法には怪談の基礎が凝縮されているように映る。その中には日本の怪談に通じる要素も複数見受けられるので、このあたりを読み比べると新たな発見に繋がるのではないか。

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