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読書備忘録『さかしま』 

*河出文庫(2002)
*ジョリス=カルル・ユイスマンス(著)
*澁澤龍彦(訳)
フランス自然主義文学を震撼させた伝説の奇書。エミール・ゾラに触発されて自然主義小説を執筆していたジョリス=カルル・ユイスマンスは、デカダンスという相反する表現法で『さかしま』を書き、新聞の書評欄を混乱させて大変な批判を受けてきた。それでも新境地を開拓したユイスマンスの挑戦は象徴派運動を促進し、芸術全般に多大なる影響を与えることになった。その物語は異様だ。貴族の末裔ながら遊蕩で遺産を失い、俗世に飽きたフロルッサス・デ・ゼッサントは祖先の城館を売り払って隠遁する。彼は大規模な改装を施し、ラテン語の書物、ボードレールとマラルメとヴェルレーヌの詩、モローとルドンとゴヤの絵画で書斎を埋めると、大海原を空想するため食堂を船室に変えてしまう。それだけでは飽きたりないばかりか、あるときは不可思議な宝石と食虫植物を愛で、またあるときは花々の色彩と香料を堪能する。装飾に装飾をかさねられた部屋はデ・ゼッサントの理想そのものであり、この人工楽園の成立と構造こそ『さかしま』の主題にほかならないのである。

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