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読書備忘録『アイロニーはなぜ伝わるのか?』 

*光文社新書(2020)
*木原善彦
俗世を生きているとことあるごとにアイロニカルな言葉を耳にする。私たちは日常的にアイロニーに接している。しかし、そもそもアイロニーとは何だろうか。一般的に「皮肉」「反語」と定義されているものだが、単語の意味を知るだけでは説明不足で「どうしてアイロニーは成立するのだろうか」という疑問が晴れることはない。文学研究者として、翻訳家として数々の英米文学を紹介してきた木原善彦氏の『アイロニーはなぜ伝わるのか?』は、その疑問に答える絶好の教科書である。まずアイロニーを理解するには、嘘と皮肉との区別、いいたいことの逆・反対であることの正確な意味、アイロニーの非対称的な性質、明言による失効といった諸特徴を把握しなければならない。ここでメンタル・スペース理論が登場する。メンタル・スペースとは認知言語学者ジル・フォコニエが確立したものであり「談話理解のための心的な表象空間」(本文より)のこと。このメンタル・スペースを取り入れることでアイロニーの理解は格段深まるので、本書のもう一つのテーマとして念頭に置いておきたい。

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