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読書備忘録『ドイツ怪談集』 

*河出文庫(2020)
*ハインリヒ・フォン・クライスト 他(著)
*種村季弘 他(訳)
ドイツにおける怪談とは如何なるものか。古今東西の文化・芸術を知る種村季弘が厳選し、一九八八年河出文庫より刊行された『ドイツ怪談集』はドイツ文学と怪奇幻想小説の入口にふさわしいアンソロジーである。このたび新装版として復刊されたのは嬉しい限り。もしかしたらヨハン・ペーター・ヘーベル(スイス)、グスタフ・マイリンク(オーストリア)といった近隣諸国出身者が複数含まれている点を疑問視する人もいるかも知れない。しかし移住した経歴や使用言語を考え、ドイツ語作家の作品と認識すれば問題はない。また収録作品の執筆時期は約二〇〇年離れている点に着目して、怪異に対する意識や表現の変化を読みとっていくのも面白いだろう。そこから見出だせるものが読者によりけりなのはいうまでもないが、自分の場合は眼前の現象をおぞましく強調するというより、合理的解釈を払いのけてしまう容赦のなさに恐怖の引き金を垣間見た。因果関係を作ったり意味付けをおこなおうとする努力が退けられると、人はなすすべもなくうろたえるほかない。

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