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読書備忘録『ほんとうの中国の話をしよう』 

*河出文庫(2017)
*余華(著)
*飯塚容(訳)
 余華氏は現代中国文学界を牽引する存在だ。一九六〇年浙江省の病院に務める医師と看護師の次男として誕生。文学の世界に飛び込む前は海塩の診療所で歯医者を務めていた。幼年時に文化大革命、魯迅文学院創作班在籍時に天安門事件を経験し、改革開放後の現代を生きる文豪は激動する中国を冷静に眺望する。アメリカ滞在中、講演準備過程で生まれたエッセイ集『ほんとうの中国の話をしよう』は、過去を顧み、社会問題や国民性を吟味し、自身の思想を添えて国外に発信する方針で編まれているので、私のような不勉強者も優しく迎え入れてくれる構成になっている。本書は一〇章にわかれている。各章に鍵となる題名が付けられており、体験談を交えながら感想を叙述するという形式。哀愁をただよわせ、感慨を込め、ときおり批判的にたしなめる語り口は母国を内外から見据えられる余華氏ならでは。なお本書は中国本土で発行禁止処分を受けたため、中国語版(繁体字版)は台湾で刊行されている。天安門事件を始め、中国史の禁忌に触れることには相応の危険がともなうようである。

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